『小金井通信』 2025年3月

●政府が閣議決定した『保険業法の一部を改正する法律案』の概要 
(取材・小柳博之)

 政府は3月7日、金融庁が提出した『保険業法の一部を改正する法律案』、『信託業法の一部を改正する法律案』、『資金決済に関する法律の一部を改正する法律案』など3法案を閣議決定した。
 『保険業法の一部を改正する法律案』は、保険金不正請求事案と保険料調整行為事案の再発防止を図るため、顧客本位の業務運営を徹底し健全な競争環境を実現する観点から、大規模乗り合いの損害保険代理店及び保険会社等に対する体制整備を強化するとともに、保険契約の締結等に関する禁止行為について対象となる行為等の範囲を拡大する。
 顧客本位の業務運営の徹底(保険金不正請求事案関連)として、①損害保険代理店に対する体制整備義務の強化:損害保険代理店のうち、複数の保険会社の商品を取り扱う(乗合)形態で規模が大きい代理店(特定大規模乗合損害保険代理店)に対しては「自動車修理業などを兼営している場合、保険金の支払いに不当な影響を及ぼさないよう、兼業業務適切に監視するための体制整備」を義務付ける。また「営業所ごとに法令等遵守責任者、本店等にはその統括責任者の設置」を義務付けた。さらに「苦情の適切かつ迅速な処理のために必要な体制整備」を義務付けた。
 なお、生命保険代理店に対しても、政令で同様な措置を規定する。
 ②保険会社等に対する体制整備義務化の強化:保険会社等に対して、自動車修理業を兼業している特定保険募集人に関連して、顧客の利益が不当に害されないよう、業務の適切な管理その他の必要な体制整備を義務付けた。
 なお、内閣府令で保険金支払い管理の適正確保の観点から、兼業業務に係る損害保険代理店の体制整備状況の監視や、保険金支払い管理部門の適切な分離等を規定する。
 健全な競争環境の実現(保険料調整行為事案関連)として、保険会社等から保険契約者等への過度な便宜供与の禁止:現行では、保険会社や保険募集人が、保険契約者又は被保険者に対して [対象]、保険料の割引き、割戻しその他特別の利益の提供 [行為]を行うことを禁止しているが、それら[対象]に、保険契約者又は被保険者と密接な関係を有する者を追加する(内閣府令で保険契約者のグループ会社等を規定)。
 併せて、それら[行為]に、取引上の社会通念に照らし相当であると認められない物品の購入や役務の提供(いわゆる便宜供与)を追加する(その他、販売面での競争促進の観点から、保険仲立人への規制を見直し、供託金の最低金額の引下げ[政令事項]等による規制緩和を図る一方、届出事項を内閣府令で追加可能とする規定を整備(不祥事件に関する届出義務を課す)。