『小金井通信』 2025年2月

●金融庁、2月19日開催の「第54回金融審議会総会・第42回金融分科会合同会合」で『金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」報告』及び『金融審議会「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」報告』を了承。 
(取材・小柳博之)

 金融庁は、2月19日10時30分から12時10分過ぎまで中央合同庁舎第7号館13階共用第1特別会議室及びオンライン形式(YouTubeチャネル配信)で「第54回金融審議会総会・第42回金融分科会合同会合」を開催。1月25日付で委員の改選を行ったため、議事に先立ち新会長の選任を行い、神作裕之学習院大学法学部教授を互選した。
 議事は、昨年8月の「第53回金融審議会総会・第41回金融分科会合同会合」で金融担当大臣から諮問事項(①資金決済制度等のあり方に関する検討:送金・決済・与信サービスの利用者・利用形態の広がりや新たな金融サービスの登場を踏まえ、利用者保護等に配慮しつつ、適切な規制のあり方について検討を行う、②保険市場の信頼の確保と健全な発展に向けた方策に関する検討:昨今の損害保険業界における保険金不正請求事案や保険料調整行為事案などを踏まえ、顧客本位の業務運営や健全な競争環境を実現することにより、保険市場に対する信頼の確保と健全な発展を図るために必要な方策について検討を行う)を受け議論してきた、❶『金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」報告』及び❷『金融審議会「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」報告』に関する事務局の概要説明、❸信託業法の一部改正(『公益信託に関する法律(令和6年5月公布)』に関する事務局説明ののち討議を行った。
 ❶は、【顧客本位の業務運営の徹底】(①「大規模乗合代理店に対する体制整備の強化等」、②保険会社による指導等の実効性の確保等」、③「乗合代理店における適切な比較推奨販売の確保」、④「損害保険分野における自主規制のあり方の整理」)、【健全な競争環境の実現】(⑤「保険仲立人の活用促進」、⑥「企業内代理店に関する規制の再構築」、⑦「保険会社による保険契約者等への過度な便宜供与の禁止」、⑧「火災保険の赤字構造の改善」)で構成。
 討議では、星委員が保険仲立人の活用実態を明かすよう事務局に求めた。これに対し事務局は「保険仲立人協会会員数は58社、損害保険の収入保険料全体の1%未満」と回答。1996年4月の保険ブローカー制度導入から30年間、同制度は殆んど機能してこなかったことを認めた。
 また、「保険仲立人は、独立した存在であり、保険会社と顧客の間に立ち保険契約を締結する中立的な立場であるのに、1996年の保険仲立人制度導入に際して、手数料は保険会社から受領すると規定し、金融庁の監督指針にこれを盛り込んでいることには違和感を禁じ得ない」といった意見も出た。
 一方、火災保険の赤字構造体質について、「企業向け火災保険商品のモニタリングの高度化や情報収集等を盛り込んでいるものの、これにはコストが伴う。地球規模の気象変動や世界的な自然災害の増加など環境変化を考慮し、抜本的な解決策を講じるべき」といった意見具申もあった。
 ❷は、【送金・決済サービス】(①「資金移動業」、②「前払式支払い手段(プリカ)の寄附への利用」)、【暗号資産・電子決済手段】(③「暗号資産」、④「電子決済手段」ステーブルコイン)で構成。
 キャッシュレス決済サービスは、利用者が数千万人を超えるなど、国民生活のインフラへと成長し、資金移動業規制の柔構造化といった対応が行われてきた。しかしプリカは、一般的な送金手段として認められておらず、寄附に利用することができないことから、今回「マネー・ロンダリングや詐欺等のリスクに留意し、国・地方公共団体や認可法人等の寄附金受領者を対象に1回当たり1~2万円を上限にプリカによる寄附を認めた」。
 一方、暗号資産や電子決済手段は、利用者保護やマネー・ロンダリング対策を徹底しつつ健全なイノベーションを促す観点から暗号資産交換業の規制強化や電子決済手段等取引業の創設といった対応が行われてきた。
 ステーブルコインは、法定通貨と連動する価値を有し額面で償還を約す(1ステーブルコイン=1円)ことを踏まえ、特定信託受益権の発行見合い金について、全額銀行等への要求払い預貯金で管理することが求められていることから、「満期・残存期間3か月以内の日本国債(米ドル建ての場合は米国債)と一定の定期預金による運用を、組み入れ比率50%を上限として認めた」。
 ❸は、主務官庁による認可や監督の基準が不統一で、しかも税制優遇を得るための制約が多いことから、公益法人と比べ利用されていない(信託件数約400件/信託財産額500億円)ことを踏まえ、主務官庁制を廃止し、公益法人と共通行政庁が公益信託の認可・監督を行う制度に改めるとともに、公益信託の認可基準及びガバナンス等を法定することで信頼の確保と使い勝手のよい制度へと見直した。新たな公益信託制度は、令和8年4月から開始される。
 なお、『金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」報告』及び『金融審議会「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」報告』は、金融審議会報告書として了承した。