『小金井通信』 2024年11月 金融審議会総会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」(第3回)
●金融庁、10月30日開催の金融審議会「損害保険業等に関する制度等WG」第3回会合で保険ブローカーの活用促進に向けた論議に着手
(取材・小柳博之)
金融庁は、10月30日14時から16時まで中央合同庁舎第9号館9階905B共用会議室及びオンラインで金融審議会「損害保険業等に関する制度等WG」(座長・洲崎博史同志社大学大学院司法研究科教授)第3回会合を開催。事務局説明ののち①保険仲立人の活用促進に向けた施策、②保険契約者等に関する便宜供与の解消等について討議した。
今回、事務局が提示した議事次第は、「保険仲立人の活用促進に向けた施策」(①媒介手数料の受領方法、②保証金の供託、③保険代理店等との協業、④海外直接付保、⑤その他)及び「保険契約者等に関する便宜供与の解消」など。各項毎に制度の現状/課題/対応の方向性について論点整理した叩き台を基に論議した。
中出委員は、「保険ブローカーの媒介手数料は顧客から得るほうが合理的である。欧米では、手数料についてフィー(作業報酬)とコミッション(手数料)を分けて考える。英・独では、顧客・保険会社双方から媒介手数料を受領できる。日本のように供託金を現金で積む方式はまれ、保険を活用するべきではないか」と発言。顧客・保険会社双方から手数料を受領する場合、保険ブローカーは顧客に対し手数料開示請求権がある旨を予め説明する事務局案に賛同した。
神作委員は、「保険ブローカーは顧客に対する誠実義務が課されており、中立的な立場である。顧客からの媒介手数料の受領に賛同する。誰からいくら得たかに関する手数料開示義務は妥当である。保険代理店も開示するべきではないか」と意見具申。事務局案の、供託額の1000万円への引き下げに賛同した。
柳瀬委員は、「保険ブローカーの媒介手数料開示の方向性は歓迎するべき。共同保険における保険代理店と保険ブローカーの協業は認めるべき。ただし、保険ブローカーを一括りにすることはできない。大規模で専門性の高いところもあればそうでないところとさまざまで、契約者保護の観点は欠かせない」と発信。米国では、豊富な知識を有すインダストリア・インシュラーが適確リスクマネジャーとして認知されていることに言及した。
各委員は、保険ブローカーの活用促進を概ね好感し、異論を唱える発言はとくになかった。ただ、共同保険の協業の際には「保険代理店と保険ブローカーの役割分担を明確にするべき」といった意見が出た。また、保険ブローカーは不祥事件を起こした場合、当局への届け出義務がないことを踏まえ「保険ブローカーのモニタリング強化の観点から当局への届け出義務を課す」事務局案を支持する意見が過半を占めた。
供託金額については、概ね1000万円への引き下げに賛同。その一方、保険ブローカーがほとんど活用されない中で2000万円だった現状と今後活用促進することに照らし合わせ、引き下げの妥当性を検証するべきといった考え方が提示された。
さらに、保険ブローカーの活用範囲について、現状から推し量ると企業分野に限定するべきといった考え方の一方、広範に家計・個人分野まで想定し活用促進の枠組みを構築するべきといった意見も出た。併せて、フィーとコミッションの算出根拠を予め顧客に説明するべきといった考え方も提示された。
事務局では、保険契約者等に関する便宜供与の解消に向け、保険契約者間の平等・公平性確保等の観点から「特別利益の提供禁止行為を対象に、例えばサービスの利用や物品の購入や、役務の提供等の便宜供与のうち、特別利益の提供禁止行為の趣旨に反するものを新たに含める。特別利益の受け手の対象に、保険契約者または被保険者のグループ企業を追加する」旨を提示した。
ワーキング・グループのメンバーは13名。上杉東京経済大学現代法学部教授/大村三浦法律事務所弁護士/沖野東京大学大学院法学政治学研究科教授/小畑一般社団法人日本経済団体連合会経済基盤本部長/片山日本労働組合総連合会総合政策推進局経済・社会政策局長/神作学習院大学法学部教授/小林ANAホールディングス社外取締役/嶋寺 基大江橋法律事務所弁護士/滝沢デロイト・トーマツ・コンサルティング執行役員/中出早稲田大学商学学術院教授/松井東京大学大学院法学政治学研究科教授/柳瀬慶應義塾大学商学部教授/山下京都大学大学院法学研究科教授。