『小金井通信』 2024年8月

●金融庁、8月26日開催の「第53回金融審議会総会・第41回金融分科会合同会合」で『資金決済制度等のあり方に関する検討』および『保険市場の信頼の確保と健全な発展に向けた方策に関する検討』を行うワーキング・グループの設置と同審議会市場制度WG報告書『プロダクトガバナンスの確立等に向けて』を了承。
(取材・小柳博之)

 金融庁は、8月26日13時30分から15時まで中央合同庁舎第7号館13階共用第1特別会議室及びオンライン形式(YouTubeチャネル配信)で「第53回金融審議会総会・第41回金融分科会合同会合」(会長・神田秀樹東京大学名誉教授)を開催した。オンライン参加者は開会から30分間、マイク不良により議事に参加できなかった。
 開会後、鈴木俊一金融担当大臣(代読)は神田秀樹金融審議会会長に対し、金融庁設置法第7条第1項第1号により、①資金決済制度等のあり方に関する検討(送金・決済・与信サービスの利用者・利用形態の広がりや、新たな金融サービスの登場を踏まえ、利用者保護等に配慮しつつ、適切な規制のあり方について検討を行う)、②保険市場の信頼の確保と健全な発展に向けた方策に関する検討(昨今の損害保険業界における保険金不正請求事案や保険料調整行為事案などを踏まえ、顧客本位の業務運営や健全な競争環境を実現することにより、保険市場に対する信頼の確保と健全な発展を図るために必要な方策について検討を行う)を諮問した。
 ②は、損害保険業界における保険金不正請求事案と保険料調整行為(カルテル)等の発生を受け、金融庁は制度・監督上の対応を検討するため、今春3月から6月に掛け『損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議』を設置し、6月25日に報告書を公表した。同報告書は、再発防止に向け引き続き検討を継続し、法律改正を行うよう示唆した。
 今後、設置するワーキング・グループの論点は、①大規模乗合保険代理店に対する厳格な規制(現在の保険業法令上、保険代理店への管理・指導は基本的に保険会社が行うことが想定されている。しかし、一部大規模乗合保険代理店では、保険会社による管理・指導が適切に行われておらず、不適切な保険募集の事例が認められる。この対応として、規制の厳格化等の制度整備の検討が欠かせない)。
 ②保険仲立人の活用促進(保険仲立人:ブローカーは、顧客から委託を受けて保険契約の締結の媒介を行うが、登録業者数や取り扱い契約額は伸び悩んでいる。企業向け保険市場の競争環境の改善を通じた活性化を図る観点から、保険仲立人の活用促進は喫緊の課題と位置付けられる)。
 ③その他(企業向け保険市場における火災保険の赤字構造の改善。企業向け保険市場における保険契約者等への不適切な便宜供与の解消等)。
 討議では、①について「保険会社が管理・指導を行う現体制を見直し、個別保険代理店がそれぞれガバナンス体制を構築するべき。保険会社は、その監督を行うべき」といった提案が出た。また「バリューチェーン保険代理店のあり方を全面的に見直し、財務諸表の細部を確認するべき」といった意見も出た。
 ③の企業向け保険市場における火災保険の赤字構造の改善について、「公的な場で業界の赤字構造を論議するのはなじまない」との意見が出た。事務局はこの問いに対し「カルテルの結果、火災保険は慢性的な赤字状態に陥っている。どういった手を打つべきか、改善策について議論する必要がある」と回答。
 一方、④大規模代理店に対する指導等の実効性の確保(損保会社による保険代理店に対する指導等の実効性の確保/金融庁・財務局のモニタリング強化/第三者による代理店の業務品質の評価の枠組みの検討/損保募集人の試験制度や継続教育の高度化・厳格化等/態勢整備の厳格化、自主規制機関についての検討)について、「金融庁や財務局のモニタリング強化程度では、そもそも実効性を確保することはできない。保険代理店の取り扱いデータを徴求し詳細にチェックするべき」といった意見も出た。
 神田会長は、二つのワーキング・グループの座長およびメンバーの人選ついて委員に一任を求め、了承を取り付けた。