『小金井通信』 2024年4月26日

●金融庁監督局保険課、4月25日に「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」第2回会合を開催、①大規模保険代理店に対する監督、②代理店手数料ポイント制度、③保険代理店に対する本業支援、④乗合代理店による比較推奨、⑤保険代理店の兼業・保険金等支払い管理のあり方等について討議。次回第3回は5月24日に開催する。

(取材・小柳博之)

 
 金融庁は4月25日9時半から、中央合同庁舎第7号館12階共用第2特別会議室で「第2回損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」(座長・洲崎博史同志社大学大学院司法研究科教授)を開催、会議の模様を9時40分からYouTube配信した。
 第2回会合は、三浦知宏保険課長が事務局資料(1.保険金不正請求事案で認められた課題及びⅡ.課題対応策①大規模代理店に対する監督、②代理店手数料ポイント制度、③保険代理店に対する本業支援、④乗合代理店による比較推奨、⑤保険代理店の兼業・保険金等支払い管理)について概要説明を行ったのち質疑に入った。
 第2回の論点は、①保険代理店の業務品質を公正かつ適切に評価する仕組みはどうあるべきか、②中立的な立場の第三者が、保険会社に代わり保険代理店の保険募集に関する体制整備の状況を評価・公表する制度はどうあるべきか、③詳細な評価結果を損保会社と連携し、必要に応じてその内容を行政当局に情報提供し共有することは可能か。生保協会が取り組む、第三者評価制度を参考に出来ないかなど。
 質疑では、①永沢委員(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント)は「生保協会の業務品質調査(認定代理店)は、保険代理店自らが自発的に応募申請する費用負担を伴う仕組みであり、今回行政当局が示唆する、中立的な第三者が損保会社に代わり保険募集に関する体制整備状況等を評価・公表する仕組みとは異なる。保険代理店が登録制度であることを踏まえると、業界団体である損保協会等が監督を担うべきではないか。消費者の立場からすると、保険の仕組みは何も分からない。保険代理店の取り扱い手数料や取引内容の開示が最も分かりやすく納得感がある」と指摘した。
 ②大村委員(弁護士)は「損保代理店の認定制度は、保険代理店の利益に繋がる仕組みでなければ機能しない」ことを示唆した。
 ③山下委員(京都大学大学院法学研究科教授)は「損保代理店と生保代理店では、管理が異なる。また評価する側のリソースが過大になり過ぎ、費用対効果も課題である。当局との情報共有は果して有効か。保険代理店手数料は、保険料×商品別手数料率×代理店手数料ポイント(規模・増収率/収益性/業務品質/適用ポイント)であるが、増収効果が過大に働きすぎ大規模保険代理店が有利になる仕組みである。業務品質(募集や事務処理における顧客対応力等を評価しポイントを加算)の開示を、金融庁の監督指針に明記するべきではないか」と踏み込んだ。
 ④嶋寺委員(弁護士)は「中立的な立場の第三者の評価・公表では機能しない。行政当局の関与は不可欠である。業界から独立した団体が評価し、保険会社の保険金支払いのあり方まで審査するべき」と言及した。
 ⑤滝沢委員(デロイト・トーマツ・コンサルティング執行役員)は「第三者評価制度の構築は不可欠である。ただ16万店に及ぶ保険代理店数に照らし合わせると、大規模乗合代理店は義務化するべきである。保険金支払いにAIを活用することは出来ないか」と提唱した。
 ⑥中出委員(早稲田大学商学学術院教授)は「第三者評価制度は、行政処分を伴う牽制力が不可欠であり、実効性の確保が肝心」と持論を展開した。
 ⑦増山委員(三菱重工業事業リスク総括部リスク管理リスクマネージャー)は「自動車保険を活用すると、100万円の保険金支払いでも、10万円の保険金支払いでも、次回契約では3等級ダウンに至る摩訶不思議な仕組みである。10万円程度の支払いであれば、むしろ免責にしたほうが妥当である」と自動車保険支払い制度に疑義を呈した。
 この他、有識者会議は6月以降も継続し、詳細な論点整理を行うべきとの意見具申も出た。次回第3回会合は5月24日の予定。