『小金井通信』 2024年2月19日

●「第52回金融審議会総会・第40回金融分科会合同会合」(金融庁が2月19日に開催)で政府のNISA及びiDeCo推進策『安定的な資産形成の支援に関する基本方針(案)』を了承

(取材・小柳博之)

 金融庁は、2月19日10時30分から正午まで中央合同庁舎第7号館13階共用第1特別会議室及びオンライン形式(YouTubeチャネル配信)で「第52回金融審議会総会・第40回金融分科会合同会合」(会長・神田秀樹学習院大学大学院法務研究科教授)を開催。鈴木俊一金融担当大臣(代読)は、神田秀樹金融審議会会長に、金融庁設置法第7条第1項第1号により『サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関する検討』を諮問した。
 今後、ワーキング・グループを新設し、サステナビリティ情報に係る昨今の国際的な動向や要請を踏まえ、我が国資本市場の一層の機能発揮に向け、投資家が中長期的な企業価値を評価し建設的な対話を行うに当たり必要な情報を、信頼性を確保し提供できるよう、同情報の開示やこれに対する保証のあり方等について検討する。
 また席上、NISA及びiDeCoの推進策(「Ⅰ 国民の安定的な資産形成の支援に関する基本的な方向」、「Ⅱ 国民の安定的な資産形成の支援に関する施策」、「Ⅲ 国、地方公共団体及び民間団体の連携及び協力」、「Ⅳ その他重要事項」で構成)『安定的な資産形成の支援に関する基本方針(案)』(正式名称は『国民の安定的な資産形成の支援に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針』)を了承した。
 『安定的な資産形成の支援に関する基本方針(案)』を概観すると、国民の安定的な資産形成の支援に関する基本的な方向感として、「資産形成(NISAは令和9年末で買い付け総額56兆円を目指す一方、iDeCoは拠出限度額の引き上げ等を検討する)は、個々人の幸福や厚生を実現するために不可欠」であり、その支援は「成長と分配の好循環や、公正で持続可能な社会の実現にも資する」との認識に立ち、「インベストメント・チェーンの各主体が十分にその機能を発揮する必要がある」ことを示唆。地方公共団体や民間企業と連携し「国全体として総合的に取り組みを推し進める必要がある」と踏み込む一方、経済・社会情勢の変化が個人の生活・経済事情に影響を与える点に鑑み「多様な資産形成のあり方に配慮した環境の整備が重要」と留意事項を盛り込んだ。
 討議では、①富田委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局総合局長)は「賃金の伸び悩みから貯蓄に辿り着けない労働者が多い中では、資産形成は投資ではなく、貯蓄が入り口である」と発言した。
 ②北尾委員(東京大学大学院経済学研究科教授)は「NISAや、iDeCoだけが税務的な便益を得られることにならないか」と疑義を呈した。
 ③河野委員(日本消費者協会理事)は「貯蓄を投資に誘導することになりかねない」と意見具申し公平性や安全性の担保を求めた。
 ④河村委員(日立製作所代表執行役執行役副社長)は「投資の考え方や基本原則のあり方に関する啓蒙が必要ではないか」と原点に立ち返るよう促した。
 今回欠席した、⑤小林委員(ANAホールディングス社外取締役)は「政策の立案・見直しにあたっては、長期的視点を持った政策を実行する必要がある。投資による資産形成では、投資する側の自立的なリスク耐性の確立が最も重要」と書面で意見具申した。
 議事では、金融審議会「公開買付制度・大量保有報告等ワーキング・グループ」報告及び「市場制度ワーキンググループ」・「資産運用に関するタスクフォース」報告に関する概要説明も併せて行い、討議の末了承した。
 神田会長は、職権で「今回の議論を踏まえ今後事務局が準備を行い『安定的な資産形成の支援に関する基本方針』を取りまとめる考えを提示した。また、「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」を設置することや、座長に神作裕之学習院大学大学院法務教授を起用することを明かし、委員に一任を求め了承を取り付けた。