『小金井通信』 2025年1月
●関東・東海両財務局、1月24日にトヨタモビリティ東京及びグッドスピードに行政処分
(取材・小柳博之)
関東財務局がトヨタモビリティ東京に対して、東海財務局がグッドスピードに対して、それぞれ行政処分を発出したことを受け、金融庁監督局保険課の下井善博保険課長及び矢野雅隆損害保険モニタリング長は24日14時から、「損害保険代理店に対する行政処分」について記者ブリーフィンを行った。
関東財務局は、トヨタモビリティ東京に対し、立ち入り検査で確認した保険金不正請求疑義を含む不適正事案について、全容把握のための調査を実施し、この調査結果を踏まえた真因分析を行ったうえで、①経営責任の所在の明確化、②コンプライアンス・顧客保護を重視する健全な組織風土の醸成、③適切な保険募集管理態勢の確立、④適切な顧客情報管理態勢及び苦情等管理態勢の確立、⑤これらを着実に実行し、定着を図るための経営管理態勢の抜本的な強化に係る業務改善計画を令和7年2月21日までに提出し直ちに実行すること、及び改善計画について実施完了までの間、3か月毎の進捗及び改善状況を翌月15日までに報告する行政処分を発出した。初回報告基準日は令和7年5月末日。
また、関東財務局は今回の処分の事由について「同社はトヨタ自動車の直営自動車ディーラーであり、新車・中古車の販売、点検・整備及び板金塗装を行うほか、保険代理店を兼業し、その本業において令和2年2月に高機能塗装・ボデーコートの未施工による保険金の過大請求が発覚したことにより、国土交通省から行政処分を受けている。これら一連の不祥事件を受け、同社は令和3年8月に『内部管理体制マニュアル』を策定し、3ラインオブディフェンスによる内部統制を構築することでガバナンスの強化を図る等、再発防止策に取り組んできたにもかかわらず、今回の立ち入り検査を実施すると、本業における保険金不正請求について、不正発覚後の伏在調査により4820台で同事案が発覚したとしているものの、当該伏在調査が部分的・限定的で不十分であることに加え、修理に使用していない部品代金を保険金として過大に請求するなど不正請求疑義事案が多数内在している蓋然性が高いと認められる等、保険金不正請求の未然防止態勢は不十分」と断定し、処分を下したことを明らかにした。
一方、東海財務局は、グッドスピードに対し、業務の健全かつ適切な運営を確保し保険契約者の保護を図るため、今回立ち入り検査を実施し確認した保険金不正請求疑義事案を含む不適切事案について、全容把握のための調査を実施しその調査結果を踏まえた真因分析を行ったうえで、①経営責任の所在の明確化、②コンプライアンス・顧客保護を重視する健全な組織風土の醸成、③適切な保険募集管理態勢の確立、④適切な苦情管理態勢及び顧客情報管理態勢の確立、⑤これらを着実に実行し、定着を図るための経営管理態勢の抜本的な強化を実施することや、これらに係る業務の改善計画を令和7年2月21日までに提出し直ちに実行すること、及び同改善計画について3か月毎の進捗及び改善状況を翌月15日までに報告する行政処分を発出した。初回報告基準日は令和7年5月末日。
また、東海財務局は今回の処分の事由について「同社は、中古車販売・買い取り等を中核事業とする保険代理店を兼業する。同社の事故車修理において不適切な保険金請求疑義事案が発生しているとの報道を受け、同社の板金塗装部門が実施主体となり社内調査を実施し令和5年8月に調査対象案件1万51件に対し30件の不適切請求事案が判明した旨を公表。その後、同社は当該社内調査の信用性に問題があると取引銀行の意向を踏まえ社外取締役監査等委員を調査委員長とする2回目の社内調査を実施し、令和5年10月に調査対象案件1664件に対し91件の不適切請求事案が認められたと公表。同社はまた、令和6年1月に不正な会計処理が継続的かつ組織的に行われていたことも公表。
これらの一連の不祥事件を受け、役員の意識改革と牽制機能の強化、監査等委員の監督強化、営業偏重の企業風土からの脱却及びコンプライアンス部門・内部監査部門の強化等、ガバナンスの改善等を含めた再発防止策に取り組んできたにもかかわらず、今回立ち入り検査を実施すると、2回目の社内調査は取引銀行から早期の融資再開を受けるために短期間の実施にとどまっていたなど、実態把握や再発防止のために十分な調査を行っていない可能性があり、調査委員長が調査結果の内容を改竄するなど不適切行為が認められた。
こうした中、同社における保険代理店としての経営管理態勢、保険募集管理態勢等についても、規定する体制整備義務に違反するとともに、特定の保険商品を推奨販売する際の推奨方針・理由の説明について情報提供義務に違反することが認められる」と断定し、処分を下したことを明らかにした。